「2017年に考える」と題して、C BIBLEでは2017年1月&2月の期間で連載を用意しました。第一回目は「コンテンツの信頼性」がテーマです。
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昨年末、DeNAによる「キュレーションサイト」の運営方針が問題となりました。
問題の一側面は、同社が運営する医療関連キュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」において、裏付けのない内容を、記事として提供していたこと。
「自社で同じことは起こり得ない」「とんでもない考え方だ」など、今回の報道を第三者視点で見るのではなく、同社の失敗を、今後周囲がしっかりと活かしていく必要があります。
最近では、顧客とのタッチポイントを持つべく、多くの企業はメディアやブログの運営を行っていますが、運営体制はしっかりと構築できていますか?また、コンテンツの信頼性に対して、しっかりと気を配ることができていますか?
1つの”ミス”や”誤り”が、企業の存続を脅かすことも珍しくない昨今、今回はDeNAの一件から、海外における虚偽ニュースの扱われ方などについても確認しながら、2017年のキーワードとなりそうな「コンテンツの信頼性」について考えていきましょう。
Contents
1.大手の情報も信頼ができない時代に?
国内報道である通り、DeNAの「WELQ(ウェルク)」からはじまった騒動は、他社にも波及し、サイバーエージェントやリクルートも、それぞれ運営するキュレーションメディアで、一部記事を非公開とする事態に追い込まれました。
2016年12月7日には、DeNAの守安功社長が、成長を追い求めるがあまり、記事の正確性や、無断転用に対して、配慮できていなかったことを認め、記者会見を開き、謝罪しています。
成長を優先するがあまり、管理体制が甘くなっていたという点については、先に挙げたような同社以外の大手メディアでも、同様のことが言えていたのでしょう。
今回の一件により、メディアは「コンテンツの信頼性」について、読者から疑いの目で見られることが多くなってしまったように感じます。
2.海外では大統領選で虚偽ニュースが拡散!
時をほぼ同じくして、「コンテンツの信頼性」は海外でも注目を集めています。
2016年11月9日未明、米大統領選が終結し、トランプ次期米大統領が選出されましたが、国内でも話題となった通り、この選挙において、GoogleやFacebook上で虚偽ニュースが拡散し、批判を浴びました。
米ニュースメディアBGRによれば、Facebookが虚偽ニュースを(意図せずも)拡散してしまったことについては、オバマ米大統領も批判するなど、国民的な問題となっています。
Washington Postは、この一件について、ロシアのプロパガンダがヒラリー・クリントン氏を陥れるために画策したものではないかとしており、巨額の金銭が背後で動いた可能性があることを伝えていますが、いずれにせよ、情報を受け取る側としては、ニュースの「信頼性」について、考えさせられるきっかけとなりました。
The Wall Street Journalによれば、Googleは虚偽ニュースサイトに対して、広告掲出を規制する方針を決めたほか、先日、Facebookは、ユーザーによる虚偽ニュースの通報ボタンや、第三者による情報精査の仕組みを設けるなど、誤った情報が発信されたり、拡散されたりすることを、積極的に排除しようとしています。
3.虚偽ニュースや信頼性の低いコンテンツはどうして生まれるか
そもそも、虚偽ニュースや信頼性の低いコンテンツはどうして生まれてしまうのでしょうか?
メディアの存在意義は、(「虚構新聞」など、一部の例外を除いて)情報を正確に、客観的に伝えることです。
国内で問題となった、キュレーションメディアの多くでは、多数の記事を集めるために、「クラウドソーシング」と呼ばれるサービスを多く利用していました。
クラウドソーシングサービス自体が、悪いというわけでは決してありません。しかし、同サービス上では、1文字1円に満たないような低単価での発注・受注が相次いでいます。
先のようなキュレーションメディアにおいても、低単価で受注したライターが、インターネット上から情報収集することによって執筆しているケースが多く見受けられました。
編集や運営をする側が、こうした状況を認識していたのかは明らかではないものの、結果的に”スルー”してしまったわけですから、SEOや記事の量産といった方法で、「営利」を意識するあまり、メディアの原点であるコンテンツの信頼性確保を怠ってしまったということになりますね。
同様に、「営利」を目的とした虚偽ニュースサイトへの批判は海外でも行われています。
Facebookは、虚偽ニュースの通報ボタンを設置する発表を行った際、虚偽ニュースの発生理由・要因について、「スパマーたちは、自分のサイトに訪問してもらうためにデマを投稿してお金を稼ぐ」と述べています。
また、ニュースの受け手側の心情も、虚偽ニュースが拡散してしまう大きな原因としてあります。Los Angels Timesは、この点について、哲学教授であるSharon Kaye氏の言葉を引用して、こう説明しています。
「If a lie is telling you something you want to hear, you’re more likely to think it’s true(嘘の内容が、聞きたいことを伝えている場合、あなたはそれが真実だと思う可能性が高くなります)」
出典:Los Angels Times「Where fake news came from — and why some readers believe it」
人は、何かが「こうあって欲しい」など、願望を抱く生き物です。
自身の考えに一致する情報が配信されているのを確認すると、つい嬉しくて、それを他者にシェア(共有)しようとしてしまいます。
こうした状況が、虚偽ニュースや信頼性の低いコンテンツの発生・拡散を生んでしまうのです。
4.「虚偽ニュース」「信頼性の低いコンテンツ」の配信は、企業の存続をも左右する
虚偽ニュースや信頼性の低いコンテンツの存在、そしてそれをめぐる争いというのは、現代特有の問題ではありません。
事実、POLITICO MAGAZINEは、ドイツの印刷業者であるヨハネス・グーテンベルク氏が1439年に印刷機を発明した当時から、虚偽ニュースが拡散されやすくなったことや、16世紀〜17世紀にかけて、民衆がより客観性のあるジャーナリズムを求めて戦っていたことなどを伝えています。
ただ、スマートフォンやWEBメディアの隆盛により、情報接点が増え、人々がよりトレンドに敏感になっている現状から、2017年は間違いなく情報の「信頼性」を追い求める動きや、「虚偽ニュース」を排除しようといった動きが、これまでより盛んになるものと考えられます。
メディアやブログ運営は、法人・個人を問わず、気軽にできるものですし、うまく使えば、顧客との関係性強化につなげることが可能です。一方で、現在の状況が状況なだけに、1つの失言が予期せぬ形で批判を浴び、SNSなどで拡散されてしまう可能性もはらみます。
独自性の高いコンテンツを生成し、たくさんの読者に読んでもらうことは名誉なことですし、コンテンツ作成側としては、そこに喜びがあるでしょう。ただ、そこには一点の「虚偽」があってもいけません。
基本的なことかもしれませんが、WEBサイトなどを運営している方は、情報を正しく伝えることの重要性を再認識した上で、最も大切な「信頼」を損なわないように注意してくださいね。
文/ビル・C・エヴァンス
編集/清水拓也
最後に:もしよかったら、ぜひFacebookファンになってください!