織田晃輔

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今、様々な場面で耳にする「VR」という言葉。

「VR」は「Virtual Reality」の略称で、日本語では「人工現実感」または「仮想現実」と訳され、私たちの五感を刺激することで、ないものを現実にあるように錯覚させる技術です。

近年では多くの企業が、この技術をマーケティングなどに用いるようになったため、大変注目を集めています。今後、VR/AR市場全体では、1800億ドルまでの成長が予想されています。

そんなVRについて、Techbookのインタビューに応えていただいたのは、2016年10月にVOYAGE GROUPでVR室を新設した伊藤さんと清さんです。新進気鋭の若きお二人に、VRの「いま」と「これから」について、語っていただきました。

VRの世界に飛び出しフロンティアを追う人々は、VRの「いま」に何を見ているのでしょうか?(4,000文字近い長文になってしまいました・・・今お時間がなければ後で読むか、ブックマークをお願いいたします!どちらにしても濃い内容です。)

VR・VRコンテンツとは?

伊藤さん(以下、敬称略):人間は知覚要素のうち、視覚と聴覚に頼るウェイトが非常に高いです。そこで、目と耳から入る情報を操作し「脳をだます」ことによって、あたかも別の世界にいるような感覚に陥らせる技術がすなわちVRです。

VRの誕生が社会にもたらす影響は「移動の革命」と呼べるのではないかと思います。

インターネットやパソコン、スマホがもたらしたのは「情報の革命」と呼ばれるように、どんなところにいても情報を得ることができるという価値でした。あたかも時空を超えて移動しているかのように実在感をもって世界を「体験」できるようになるのがVRの本質的な価値だと思います。

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※VR機器の調整に入る伊藤さん・清さん

単にディスプレイで「情報」を得る従来のコンテンツと比べて、そこにあるような「実在感」や「雰囲気」を感じられるのがVRの特徴であり、今後そういった特徴をうまく利用できるコンテンツが伸びていくと思います。

清さん(以下、敬称略):VRというのは、頭に何かしらのハードウェアを被ってコンテンツを体験するだけのものという認識に留まってはいけないと、個人的には思っています。

学術的にはVRは以下の3要素で定義されていて、これらをなるべく多く満たすほど没入感が高い、良いコンテンツになるのではないかと思います。

学術的なVRコンテンツの定義

 

  • 「実時間のインタラクション」:リアルタイムにコンテンツ内の世界に影響を与えられる
  • 「等身大の三次元空間」:自分の見ている世界と同じスケールの世界があるように感じられる
  • 「自己投射性」:そのコンテンツ内に自分自身が入っているように感じられる

 

例えば、「戦場の絆」というゲーム筐体(きょうたい)は、ガンダムのコックピットを模したカプセル型の機器内で、球面の内側に映像を投影することでコックピットから見える視野を再現することにより、実際にガンダムのコックピット内で操縦しているかのような錯覚に陥ります。

こういったものはヘッドマウントディスプレイこそ利用しませんが、上記の3要素を完璧に満たしているのでVRと言えると思います。

VRマーケティングを理解するための4事象

伊藤:この図は、VRを使ったマーケティングを、より理解しやすくするために用いる図です。この図の見方としては、横軸と縦軸に分けて、合わせて4つの項目にVRの活用方法を分けました。

スクリーンショット 2017-02-02 19.55.41横軸は、実際にお客さんが出向いて遊んだり、利用したりするVR活用を「ロケーションベース」とし、その反対に家庭などで手軽に楽しむことを目的とした活用を「家庭・個人」としています。

また縦軸は、アミューズメントやエンタテイメント系の文化を創設するVR活用を「コンテンツ」とし、移動の革命とも言えるVRを実生活に取り入れた活用を「ツール」としています。

この図をもとに、4つの事象に分けて解説します。

【事象1】ロケーションベースにおけるコンテンツの展開

伊藤:日本国内では、これから多くの場所でVRの利用が始まっていくと思います。

VRは現在、実店舗に赴いてVR体験をする、ロケーションベースで、ハイエンドなVR機器を使ったものと、スマホを使った家庭向けのものの2つが主流です。

現在でもすでに実店舗でVR体験をする「ロケーションベース」のサービスが展開されています。

先日までお台場で展開されていた「VRZONE Project i Can」や、最近渋谷にオープンした「VR PARK TOKYO」など、VRコンテンツを気軽に体験できるスポットは増えてきています。

他にも、去年JRAが行っていた、馬の形をしたマシンに乗った状態で、VR機器を装着して、天馬に乗って空を翔ける体験ができるというものがあります。

(参考:「VRでなら馬も空を飛ぶ! JRA主催イベントの4D競馬アトラクションが斬新過ぎ!」 )

他には、Samsungが去年実施した、Gear VR(スマホ装着型ヘッドマウントディスプレイ)の映像と4D映画用シートの動きを同期させて、本当にジェットコースターに乗っているような体験ができるようなコンテンツも人気を博していました。

ハイエンドなVR機器を使って、スペシャルな体験を売りにしたものがこれらに含まれます。手軽に遊園地にいるような感覚を楽しむことができるので、これからも、この活用方法は増えていくのではないかと思われます。

【事象2】個人・家庭向けコンテンツの展開

伊藤:家庭向けというのは、スマートフォンを専用の器具に装着するなどして、VR体験を手軽にご家庭で楽しめるようにしたものです。

例えば、昨年の夏くらいに日本のディズニーが行っていた、スマートフォンにディズニーランドの様子が映し出されて、そこにいるような感覚になれるというサービスがこれに当たります。

軽いゲームのようなものが楽しめ、ディズニーランドに行きたいと思わせるような工夫が凝らされていました。

【事象3】ロケーションベースにおけるツールとしての活用

伊藤:「ツール」としての活用というのは、アミューズ・エンタメ系のコンテンツとVRを掛け合わせているものとの対義語として使っています。VRを実生活において利用するという観点から「ツール」と呼んでいます。

VRはツールとして、ロケーションベースで活用することもできます。

例えば、まず街の不動産屋にVRを常設しておきます。そうするとまずお客さんはそこへ行って、VRを使って候補に挙がった全ての物件の内見を行い、それから実際に行く物件を絞り込むことができます。

また、結婚式場の下見にも活用が可能です。

特に海外の式場は現地に行って確認するのが難しいので、VRを利用することで、国内から海外の式場を下見できるようになり、大幅に費用を抑えられます。

【事象4】個人・家庭向けのツールとしての活用

伊藤:賃貸仲介などのスーモさんや宿泊施設紹介のじゃらんさん、ブライダル関連のゼクシィさんは、フリーペーパーにカードボード型のヘッドマウントディスプレイを同梱するなど、スマホを使ったVR体験をマーケティングに繋げるようになってきています。

こうした方法で手軽にVRに触れてくださる方が増えるのは大変うれしい一方で、個人的にはその1回の体験だけでVRという技術を判断しないでほしいという思いもあります。

ハイエンド環境での良質なコンテンツに比べると、スマホベースのものはマシンスペックの関係で酔いやすかったり、コントローラーがない関係でできることが限定されたりします。

スマホの体験だけで「VRは大したことない」「VRは酔うから嫌い」と判断してしまうのはもったいないので、ぜひハイエンドのコンテンツも体験してほしいなと思います。

各界から注目を集めるVR、その魅力とは

伊藤:最近は私達の書いている技術ブログ経由でお問い合わせをいただくことも増えてきました。

お問い合わせをしてきてくれているのは、不動産関係であったり、研究機関であったりします。興味を持っている方々が各方面に存在していることからも、VRの注目度の高さが伺えると思います。

清:去年のレポートになりますが、ゴールドマンサックスが出している2025年時のVR/AR市場の大きさを予測した資料があります。こちらのレポートによれば全体の市場規模が1800億ドルで、内訳としてはビデオゲーム、ライブイベント、ビデオコンテンツが続いています。

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(出典:「PROFILES IN INNOVATION Virtual & Augmented Reality」)

また自身の生活の中でも気づくこともあって、我が家にはテレビがないんですけど、VR機器で動画を見る体験は80インチくらいの大型サイズのテレビを見ているのと同じような体験ができるんです。

80インチのテレビを買うと数十万円かかってしまうと思いますが、これなら大金をかけずに同じような体験が出来るので、それも魅力の一つだと思います。

伊藤:今はVRという言葉にまだまだ新鮮味があるので、あと1年くらいは「VR」というワードを使うだけでも多くの人を呼び込むことができるでしょうが、これからVRが一般化する中で、より本質的な面白さがあるコンテンツでないと、うまくいかなくなってしまうのではないでしょうか。

 

(『VOYAGE GROUPの若き2人に聞いた「VRのいま」―1800億ドルのフロンティアを追う』はここまでです。)

この記事は、後編「VRのこれから」に続きます!

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↑今回、取材にご協力いただいた VOYAGE GROUP VR室さん のブログはこちらです。

 

文/テックブック織田 晃輔


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